この記事でわかること
AIに入力してはいけない情報の具体的な種類
なぜその情報がNGなのか、その理由
迷ったときの判断基準と、今日から使える最初のルール

手が止まる瞬間がある

ChatGPTや他のAIツールを使い始めると、こんな場面に出くわすことがあります。

メールの文章を直してもらおうと思ったら、取引先の会社名が入っていた。議事録を要約させようとしたら、社員の名前と給与の話が含まれていた。見積書の内容を整理したくて貼り付けようとして、ふと手が止まる。「これ、入れてもいいのかな」と。

その感覚は正しいと思います。むしろ、一度も迷わずに使い続けているほうが少し心配です。ただ、迷ったまま使わないのももったいない。今回は「何を入れてはいけないのか」を具体的に整理して、判断に迷わないように、一緒に整理していきます。

まず知っておきたい、AIの仕組み

なぜ入力する情報に気をつけなければならないのか。その理由を少しだけ知っておくと、判断がしやすくなります。

ChatGPTなどの無料・個人向けプランは、利用者が入力した内容をAIの学習に使う場合があります。つまり、自分が入力した情報が、将来的に別の誰かへの回答に影響を与える可能性がゼロではありません。

また、ChatGPTはアメリカの会社が運営しており、サーバーも海外にあります。顧客の個人情報をそこに送ることは、法律の観点からも慎重に考えた方がいい状況になっています。

「外に出してはいけない情報を、外のサービスに送っている」というイメージを持っておくと、判断しやすくなります。入力する前に一度、「これは社外に出していい情報か」と自問する習慣を持っておくと、それだけで多くのリスクを避けられます。

入力してはいけない情報、具体的にはこれ

迷わないように、NGの情報を具体的に挙げていきます。

  • 顧客の名前・住所・電話番号・メールアドレス

個人情報にあたります。「自分しか見ていないから大丈夫」とは言い切れないのがAIツールの特性です。

  • 取引先の会社名と、具体的な取引金額・契約条件

万が一外に出れば、取引そのものが危うくなることもあります。

  • 社員の氏名・給与・人事評価の内容

「〇〇さんの評価文を考えてほしい」という使い方も、個人情報の外部送信にあたります。

  • 自社の未発表の新製品情報・開発計画・技術仕様

製造業では製法や仕様も含まれます。競合他社に先に知られるリスクがあります。

  • 見積書・契約書・請求書の実際の金額や数量

取引先の会社名や担当者名が入っていることも多く、書類をそのまま貼り付けることは複数の機密情報を一度に外に出すことになります。

  • 固有名詞や社内の数字が入った会議の議事録

「〇〇社との交渉で、担当の△△が…」といった内容が含まれていれば要注意です。

  • 銀行口座番号・クレジットカード情報

AIツールに限らず、どんなサービスにも入力してはいけない情報です。

  • システムのIDやパスワード

「パスワードを安全な形式に変えてほしい」という頼み方も、それ自体が危険な行為になります。

じゃあ、何なら使えるのか

ここまで読んで「結局、何もできないじゃないか」と思った方もいるかもしれません。そんなことはありません。少し工夫するだけで、AIは十分に役に立ちます。

コツは「固有名詞と具体的な数字を外す」ことです。

たとえば、「株式会社〇〇の田中社長に送る、納期遅延のお詫びメールを書いてほしい」という使い方はNGですが、「取引先の社長に送る、納期遅延のお詫びメールを書いてほしい」に変えればOKです。内容は変わらないのに、個人情報は含まれていません。

「今期の売上が〇〇万円で、前年比〇%減だった理由を整理してほしい」は避けた方がいいですが、「売上が前年より落ちた理由を整理するための視点を教えてほしい」なら使えます。

一般的な文章の言い換えや、アイデア出し、メールの構成を考えること、文章を読みやすく整えることなど、固有情報が入らない作業であればAIはそのまま活用できます。AIは下書きを作ってくれる係です。固有情報を当てはめて仕上げるのは、最後に人間がやればいいことです。

社内ルールはシンプルでいい

「社内でAIのルールを作らなければ」と思うと、なんだか大がかりな話になってしまいそうで、腰が重くなります。でも、最初はそんなに難しく考えなくて大丈夫です。

まず一言だけ決めておくとすれば、「固有名詞と数字は入れない」で十分です。お客さんの名前、社員の名前、会社名、金額、数量。これらが含まれているときは、一度立ち止まる。それだけでも、ほとんどのリスクは避けられます。

ルールは貼り紙一枚でもかまいません。パソコンの近くに「AIに入れてはいけないもの:名前・金額・会社名」と書いたメモを置いておくだけで、判断に迷う場面がぐっと減ります。難しいガイドラインより、現場で実際に守られるシンプルな一言の方が、ずっと頼りになります。

まとめ

AIを怖がる必要はありませんが、何でも入れていいわけでもありません。今日から意識してほしいのは、ただ一つのことです。「固有名詞と数字を外してから使う」。これだけで、AIは安心して使える道具になります。

完璧なルールを作ってから使い始めようとすると、いつまでも使い始められません。まず「名前と金額を外す」ことだけ意識して、一度試してみてください。使いながら感覚をつかんでいけば、それで十分です。

Q&A

Q. AIに入力した情報は、本当に他の人に見られるのか?

直接「他の人が見る」という仕組みではありませんが、無料・個人向けプランでは入力内容がAIの学習データに使われる可能性があります。学習データに組み込まれた情報が、別のユーザーへの回答に影響することは理論上あり得ます。「見られる」というより「外に出る入口がある」という感覚で考えるのが実態に近いです。心配な場合は、設定画面から学習への使用をオフにする方法もあります。

Q. 無料プランと有料プランで、セキュリティに違いはあるのか?

あります。個人向けの無料・有料プランでも設定次第で学習への使用を止めることはできますが、企業向けのプラン(ChatGPT BusinessやEnterpriseなど)は、入力情報を学習に使わないことが最初から保証されています。会社としてAIを本格的に使っていくなら、企業向けプランを検討する価値があります。

Q. 社内でルールを決めるとき、どこから手をつければいいか?

まず「入力禁止リスト」を一枚紙で作ることをおすすめします。難しい規程を整備するより、「これは入れない」という具体的なリストを現場に貼っておく方が、実際に守られます。最初は「名前・金額・会社名・パスワード」の4つだけでも十分です。使いながら気になる点が出てきたら、少しずつ追加していけばいいと思います。